ご丁寧に免許証と一緒にカギを持ち歩く父

長女は外出する際、荷物が多くなるそうだ。逆に末っ子は荷物が少ないらしい。それは育った環境のせいでもあるようで、長女の場合は何かあったときに自分で何とかしなくては、という意識が強く、あれもこれも所持しようという気持ちになるらしい。その反対に末っ子は何かあった場合でも誰かに助けてもらえるという意識が働くため、あまり物を持たなくても何とかなると楽観的でいられるそうだ。私は長女で、しかもズバリその通りなので、荷物の少ない末っ子気質の人が羨ましく感じる。

では逆に男性の場合はどうなのだろう。私の父親は末っ子であるけれど、荷物は常に多い人だ。戦争で幼い頃に父親を失い、母親を助けて育ってきたせいもあるかもしれないけれど、父にはあまり楽観的なところはなく、むしろ神経質なところが目立つ。だけど、それがかえって裏目に出ることがある。先日もそうだった。

外出先から家に帰った父が、「ない!ない!」と血相を変えて騒ぎだした。何がないのかと聞いてみると、「全部ない!」との返事が返ってきた。カバンを失くしたのかとも思ったけれど、父愛用のカバンはちゃんとある。ところが父は、カバンの中に入れてあった小物入れを失くしてしまったのだった。こんなオジサンが小物入れって…しかもどうせ大したものなんて入れてなかったんだろう。そんな私の予想を裏切り、その小物入れの中には家のカギ、免許証、印鑑など、大事なものが本当に全て入れられていたらしい。ていうか、ご丁寧に免許証と一緒にカギなんか持ち歩くなんて、私からしたら父はどうかしてる。もし盗まれたりしたら、どうぞ免許証に書いてある住所にそのカギを使って入ってくださいませ、と言っているようなものだ。

結局最後に寄った銀行に問い合わせたら、父の小物入れはそこで保管されていたそうで、事なきを得た。父はそれを教訓とし、外出する際の荷物を最小限に減らすことに決めたのだった。